黌辞苑

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140周年特別寄稿

済々黌 三綱領をひもとく。
後編 令和を生きる、私たちの三綱領。

2022.11.11

ナビゲーター:田中 泰延

ライター:井関 麻子

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とにかく、日々が楽しくて!

取材2日目。いよいよ総本山・済々黌高校の黌内に足を踏み入れた。本日のテーマは「令和の三綱領」。今を生きる生徒、教員にとって、三綱領とはどんな意味を持つのだろうか。多士会館をすみずみまで探検し(かつて使われていた浴槽でバーチャル多士体験も満喫し)すっかり三綱領マスターになりつつある田中氏と歩みを進めた。まずは教頭を務める平川真由美先生にインタビュー。

平川先生も済々黌の同窓生でいらっしゃるんですよね。今も三綱領は大事になさっていますか?

そうですね、本校は何かといえば三綱領なので。私たちにとって大事なものなんです。同窓生が揃うと、みんなで唱和しますし。

同窓生の飲み会は、一本締めじゃなくて三綱領!みたいなノリですか?

最初か最後どちらかに。学年ごとに応援団メンバーがいるので、その人が音頭を取って校歌を歌ったり、三綱領を唱和したり。

それは良い光景ですね。平川先生は教員としても色々な学校を見て来られたと思いますが、改めて済々黌の特色というか、済々黌ならではの魅力を教えてください。

済々黌は、良い学校なんです(キッパリ)。どんな学校も、それぞれに良さがあり、団結力もありますが、済々黌の場合は“済々黌”の名のもとに集まる感じがあって、それは独特かつ心地良いものだなと思います。教員の立場から申しますと、OB のサポートが大変に手厚くて、ありがたいです。

みなさん、そう仰るんですよ。OBがすごいって。

例えば、生徒が全国大会に行くともなれば、とてつもないスピードで手厚い支援金が集まります。他校では寄付集めに苦労することも多いのですが。こんなに先輩方が手厚くしてくださる学校はないと思います。

ああ〜! そうですね。僕らも多士会館を拝見して驚きました。立派な3階建ての建物があって、在校生たちみんな「多士って帰るか」みたいな感じで集まって勉強して、というのはすごいことですよね。

ありがたいですよね。どこを探してもこんな公立高校はないと思います。

生徒から「三綱領って何?」とか「大義って何?」とか聞かれたりしないですか?

最初のオリエンテーションで意味を説明するんです。そこでだいたいの意味を理解してもらいます。ただ、本気で問われたら難しいですよね。三綱領の根本的な思想みたいなところに触れてくるので。特に大義については、偉大な先輩方もそれぞれの解釈をお持ちだったり……。実は深淵なテーマかなと(笑)

みなさん、それぞれの大義をお持ちだから(笑) ちなみに平川先生は、高校時代の思い出といえば何が思い浮かびますか?

とにかく毎日、毎日が楽しくて(笑)特別なイベントじゃなくても、日々が。

昨日、他の同窓生の方も同じことを仰っていました。特別なことじゃなく、友達と楽しく過ごすせたのが良かったって。

何があんなに楽しかったんでしょう(笑) でも、きっと今の生徒たちも青春を謳歌していると思います。そういう雰囲気は伝わってきますね。

実はこの後、生徒さんとの座談会を開いてお話を伺う予定なんですよ。平川先生の頃と今の生徒さんの違い、イマドキの学生さんの特色はありますでしょうか?

うーん、細かいところは違うと思いますが……。むしろ変わらない部分を強く感じています。終始一貫、変わらざるというか。昔も今も生徒がのびのびしていて、割と個性の強い集団ではあるんですよね(笑)個性的なところ、変わっている部分もそのまま受け入れられる感じが済々黌の良さかなって。

ありがとうございました。同窓生として、教員として、生徒を優しく見守る平川先生の眼差しが印象的でした。

済々黌生よ、リーダーたれ。

次に、黌長室を訪ねた。鶴山幸樹黌長は、22年ぶりの卒業生黌長なのだという。

在校中と今とで、心境に違いはありますか?

高校時代と今ではまったく違いますね。卒業してから、やっと済々黌の生徒になったかな、という感じです。

あぁ、同窓会の方々も仰っていましたね。卒業後の方が、関係が深くなると。

今、付き合いのある先輩後輩同級生は、高校時代ほとんど喋ったことない人たちなんですよ。卒業してから知り合った。その積み重ねで、ありがたいことに黌長として赴任しているというところですかね。今の方が、より黄色いかなと思ってます(笑)

その「黄色い」っていうのは、具体的な言葉にすると?

済々黌が好きということです。

「黄色い」って表現するんですね。面白い。先生から見て、済々黌らしさって何だと思われますか?

自由闊達・自由奔放な中でも、伝統や縦の繋がりを大事にする姿勢ですね。自由と伝統っていうと、相反する感じがするじゃないですか。

はい。でも、両方あるのが済々黌なんですね。

はい。自由じゃなければ済々黌ではないと思いながらも、 伝統とか先輩への敬意とか、こういうときはビシッと決めなきゃダメだという習慣っていうのかな、 そういうのも好きなんですよね、みんな。

済々黌の生徒の心の拠りどころは、三綱領だとお聞きしています。

それは間違いないです。校歌よりも前に、創立と同時に三綱領が掲げられている。こういう生徒を育てる、こういう学校にする、というのが明確にあって、それが100年、140年続いているのはすごいことですよね。高校時代も、その重みは感じていました。

どんなところに表れていましたか?

普段は決して真面目じゃない先輩たちも、三綱領の話になると背筋が伸びるような。三綱領って軽々しく捉えたり、侵したりしちゃいけない部分なんだと肌で感じていましたね。漢字を見れば何となくの意味も分かりましたし。「知識を磨いて文明を進む」とか「元気を振るう」とか、伝わってきますよね。

「解釈するとこういうことだよ」と生徒に訓辞されることはありますか?

僕は最初の「倫理を正し、大義を明らかにす」ばかり言ってます。あそこが一番、分からないじゃないですか。「大義」は時代によって捉え方が変わると思いますけどね。創立当時、戦時中、現在。元々は君主とか国家に忠誠を誓うという意味合いが強かったと思うんですけど。

140年前は、ですよね。

140年前あるいは100年前ですね。戦時中は、それが当然とされた時代ですよね。そうだったんだけど、今は……。

ちょっと違うかな、と?

「国家に忠誠を」って書いてあるでしょう。それは、ちゃんと説明しないといけないじゃないですか。時代に合わせて。有名な話ですけど、終戦後にGHQ が来たとき、通訳の方が大義=グレートソーシャルサービスと訳してくださって、相手の方にも理解してもらえたそうなんですよ。

機転を利かせて訳してくれたんだ!

大義=エンペラーへの忠誠心という風に訳していたら「この額はすべて外せ」ということになっていたと思うんですよね。そうならずにいろんな正念場を越え、危機に晒されながら、現在まで残ってきたという。

「大義を明らかにす」は、グレートソーシャルサービスかぁ。

今の私が解釈すると、大義は世界平和への貢献とか人命最優先の精神、そういった風に捉えて良いんじゃないかなと思います。社会貢献ですよ。生徒には世界情勢の話もします。今すぐウクライナに行けとか、そういうことではないけれど、何かできるんじゃないの?という。まずは関心を持つことだと。これは、始業式でも終業式でも話しました。

実はこの後、現役の生徒さんたちにもお話を伺います。鶴山先生から生徒へ、託したい思いはありますか?

基本的には学生ですから、勉強して無駄なことは何もない、一生懸命に勉強しなさいというのが大前提。僕らの年齢になったらそんなに頭に入ってこないからですね(笑)若いうちにたくさん勉強しなさいということは、もちろん前提として言いたいですけど。うーん、伝えたいことか……。

何でも良いです。

生徒は、教員に注意される機会も少なからずあります。そのときに「先生、僕たち、私たちは、そういうことを言われなくてもできます」「そんな恥ずかしいことは毎回注意しないでください」という風に言えるような生徒になってくれたら最高ですよね。「言われなくてもわかってます」と。

はぁ〜!

もっと言うなら、先生が何かを注意した際に、リーダー格の子が「ちょっと僕にも言わせてください」って出てきて「情けないばい」っていう風にね、生徒が生徒を叱咤してくれるような。

カッコいい先輩だ!

そういう先輩がいましたよね、我々の高校時代は。「先生から注意されたから従わなきゃ」と考えると、自己肯定感が下がるばかりじゃないですか。先生が注意した後で、私も言いたいって自分たちの言葉で伝えてくれると、生徒たちが自主的に成長する集団になっていく。そういう動きがほしいですよね。

素晴らしいですね。僕も娘に伝えているんです。お父さんやお母さんに何か言われたからやるんじゃなくて、自分で決めたことをやるのが一番なんだよって。

そうですよね。僕らの指導も、もちろんきちんと聞いては欲しいですけど(笑) ときには、こっちがヒヤヒヤしながらも、ギリギリのところで生徒が収めたりしてくれてもいいのかな、と思いますね。リーダーが育たないと。うちはリーダーを育てにゃいかん。

卒業生も、いろんな分野で社会のリーダーに。

もう360度いますよ、いろんな角度にいますから。後輩たちにも続いてほしいですね。

ありがとうございました。今の話を伺ったうえで生徒のみなさんと会うのが、すごく楽しみです。

済々黌に入れば、何でもできるよ。

三綱領と佐々友房をめぐる小さな旅も、いよいよ終着点が見えてきた。最後は現役の済々黌生たちに話を聞き、開黌140年目の今、令和4年に息づく三綱領の姿を見つめてみた。座談会メンバーは以下の9人。

池田周治 放送部

市原陽菜 放送部

佐藤ひかり 生徒会

澤村宗輝 生徒会

中山 愛那 応援団長・空手道部

松本大蔵 放送部

黒川先生 学年主任

林先生 総務部長

田中泰延 ファシリテーター 

全体のまとめ役、クリエイティブディレクターの田中と申します。私は大阪から来て、済々黌のことも佐々先生のこともほとんど知らないまま、いろいろ見学させていただきました。今日はざっくばらんにお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします!

よろしくお願いします。

この座談会の前に教頭先生・黌長先生にもお話を伺ってきたんですけど、おふたりとも学生時代はとても楽しかったんですって。みなさん、どうですか?

私は阿蘇から通学しているので、通学時間が長いとか、課外で早起きとか、課題が終わらないとか……。しんどいことも多いんですけど(笑)やることはやる、行事など楽しむところは全力で楽しむ済々黌らしさを日々感じています。

なるほど。応援団の中山さんはどうですか?

初めて全校生徒の前に立って校歌を指揮したときに、すごく感銘を受けて……。いや、これが済々黌だなあって(笑) 今はコロナの影響で、みんなで歌う機会はほとんどないんですけど、それでも1番から4番まで、みんなしっかり覚えていて。4番になると、歌声がさらにウワーッと大きくなっていって。やっぱすごいなって感じました。

ありがとうございます。そうかぁ。なんかねぇ(感涙)

率直に、済々黌で過ごせて幸せだなって思います。高校に入っていろんな人に出会って、毎日刺激があって、楽しくて、済々黌に入学できて幸せだなっていうのが、思うことです。はい。

お金もらって喋ってないか? 大丈夫か?(笑)先生どうですか! こんなに良い子たちが!

そうですねぇ、今日の私の人選は最高ですねぇ。

あははは(笑)

我々もしんどいなぁと思うことは多々ございますけれども、今、話を聞いていて報われたような気がします。それだけのことを彼らはやっていますし、それだけのことを我々は課しています。課して課されてやり抜いていくっていうのが、やっぱり済々黌なんですよ。

逆に、入ってから「なんか思ってたんと違うぞ済々黌」っていうの、あったら教えてもらえませんか?

……校舎の、トイレが臭い。

爆笑

それはしょうがないよなぁ(笑) 逆に「思ったより良かった」でも良いですよ!

OBOG の方と繋がりが強いっていうのは聞いていたんですけど、思ったよりもすごかったです。私が応援団に入った頃、上の学年がいなかったので、引き継ぎが上手くいかなくて。そのときに大学院生や社会人先輩方が練習に来てくださって、本当にありがたかったです。もっと厳しいかなと思ってたんですよ、応援団のOB OGって。でも「継いでくれてありがとう」っていう感じで優しくしていただいて、先輩後輩の絆は本当に強いなって。

どうしよう、トイレ以外は何も……(笑) じゃあ、入学前に「済々黌こういう高校だろうな」って思ってたことあります?

そうですね、済々黌に行きたいって言い始めた段階から「済々黌って宗教だよ」って言われ続けてました(笑)

(笑)それは誰から聞くんですか?

周りの大人とかインターネットとか。入ってみたら、確かに入学して次の日ぐらいに校歌を全部覚えさせられたりとか……いや、覚えたり(笑)

県立高校なのに「あそこは宗教」って面白いですよね。入ってみてどうですか? 宗教みたいに刷り込まれるって思ったことあります?

もう刷り込まれてるのかもしれないです。気づかないだけで。

(笑)

校歌を覚える、三綱領があるとか、そういうのがきつくて窮屈だと思ったことあります?

いや〜ないです。

全然、話題が違うんですけど、朝課外が毎日7時半からあってきつい……(笑)

ははははは!

朝の課外授業のことですね。ゼロ限目。冬だと、朝はまだ暗い時間に来て、夕方は真っ暗な中を帰りますね。

朝ちょっと来て、みんなで掃除とかして、わーいっていう感じではなくて、ゴリゴリの勉強?

ゴリゴリの勉強、ただし来年からは県下一斉で廃止になります。朝はなくなりますけど、放課後の夕課外は受験対策として必要なので、それだけはやらせてくださいとお願いして。だけど、それも数年後どうなるかわからない。都会は塾がしっかりあるから良いけど、九州はやっぱり学校の課題の中で鍛えますよっていうのがシステム的に根付いてるんです。しんどいですけどね。

とはいえまぁ、オジサンぐらいの世代からすると、高校時代はいくら勉強しといても悪いことないと思うけどね。本当に勉強って大事よね。

だからちょっとね、課外あってもいいよね……。

朝課外、実は好きなんです。誰もいない時間に登校して、みんなで「きついね〜」とか言ったりして(笑) 楽しいなって。

そのおかげで生活リズムも良くなったと思います。早起きの習慣がついたので。

昨日から、多士会館で自主的に勉強してる生徒をたくさん見たんだけど、多士会館に良く寄る人はいます?

(池田さんだけ手を挙げる)

意外と少ないね。

3年生が多いんですよね。全員は入れないから。

ちょっと今の時期は控えめに使います。

3年生ものすごく多かったもんね。あ、あと「多士る」っていう言葉は?

ああああ〜。言いますね。

言うんだ。初耳だね。面白いですね。今度、紹介しよう。

同窓会が自分たちでお金を出し合って、あんな立派な建物を建ててくれて「好きに勉強していいよ」っていう県立高校、びっくりですよ。そういうのはどうですか? 高校としてめっちゃ恵まれてるっていうか、先輩に可愛がられてるっていうか、実感はありますか?

(生徒たち頷く)

今回、僕らは取材で何も知らずに済々黌へ来たんだけども、佐々先生がいらして、三綱領があって、みんな済々黌が大好き。本当に良いよねぇ。

(笑)

ちゅうことは「創った人が偉い!」と思うわけですよ。みなさんは「佐々先生ってこんな人だったんだろうな」とイメージできるか、それとも昔の人だから全然わからんのか、どうでしょう?

140年前のことって、ちょっとイメージ湧かないですね。でも三綱領は、とても素晴らしいものだなって思います。

三綱領はみんなソラでいえるの? 中身についてはどう? 団長はさ、みんなに「こんなん唱えさせられてるけど、意味わかってるんか自分」って聞かれたら、どういう風に答えます?

…………元気を振るうしか(笑)

それは俺がさぁ! 学期の都度都度でさ、書かせたでしょうが! あなたはどういうふうに解釈するか、今みたいに問われたらちゃんと返せるようにって。仕込みはしてるんですよ!

爆笑

自分なりの解釈で良いですか?「倫理を正しうし」がこう……。自分なりの正義というか正しいこととか、社会のことを見つつ自分でよく考えて、正義を持って、それに従って真心を持って行動するっていう意味だと、私は捉えていました。

(林先生に)先輩、合ってます? 今ので。

正しいか否かというよりは、自分なりの解釈があったら聞きたいなと思っていたので大丈夫です。

最初の「倫理を正しうし大義を明らかにする」は、生徒の自主性、自分の中での信念みたいな意思、「社会に出ても自分の中ではこれを大切にしよう」みたいな部分が書いてあると思っていて。2節目は、学校行事とか他のところでも、思いっきりやるところは元気に。そして勉強も大切にしようっていう。まとめると、高校生活だけじゃなくて、社会に出た後にも必要な140年前からの教えが入ってるんじゃないかなって私は思っています。

なるほど、良い答え聞いたなぁ。あの、勉強的なことが3番目に来ているのはどう思います? 僕は不思議だなぁと思ったんやけど。

入学式の時に三綱領を教えてくださった先生が、最初に「徳」だよって仰ったのは、今でも鮮明に覚えていて。勉強とか知識とかよりも、最初に人としての「徳」を身につけるっていうのが良いな三綱領って良いなって思ったキッカケです。

順番がちょっと変わってますよね。普通は知・徳・体ですよね。徳・体・知ですからね。そこは確かに済々黌で受け継がれてきているところですよね。

人間として大事なことを一番頭に持って来てるんですね。その一番大事な「大義」って、何か大仰な言葉だけど、どう思います?

僕的には「倫理を正しうし」が、これまでの自分の経験とか体験とか含めて、本質を見極めるということで……。「大義」が自分の使命を明らかにするっていうことだと思うんですけど。

自分の使命。いい答えやなぁ。

私は、自分の中に絶対にブレない軸っていうのを一本持つことかなと思っています。

みんな良いこと言うね。それぞれ解釈してるんだね。黌長先生も、エエこと言ってはったのよ。大義は、グレートソーシャルサービス。GHQ が三綱領を見て、これは右翼的な宣言じゃないのか、こんなん辞めさせるって言われそうだったときに「大義というのは、グレートソーシャルサービスです」って翻訳したんだって。社会のための崇高な方針、社会貢献の心こそ大義だと。

黌長先生がお話してくださったの、覚えています。

ちなみに、中学時代の同級生とかに「怖くない? きつくないの?」って言われることはないですか?

むしろ羨ましがられます。済々黌いいなあって。楽しそうって。

外から見ると宗教だけど、入んないとわかんないことも多いから(笑)

いや〜まだまだいっぱい聞きたいことあるね。今、みんなは高校生じゃない? 将来どんな生き方したいか、どんな仕事に就きたいか、夢があれば聞きたいんですけど。これだけ熱のある高校生活だったら夢も持ってるんじゃないか? 俺はなかったの、何も。

私は高校の理科の教師になりたいです。中学時代、すごくお世話になった塾の先生に憧れて決めたんですけど、済々黌に入ってみたら、個性的で面白い先生、質問に丁寧に対応してくださる先生、部活に熱心に関わってくださる先生がいらして。高校教師が良い!と思うようになりました。今いらっしゃる先生方のような存在になれたらなと思っています。

先生方、すごく噛み締めながら聞いていましたね。ありがとうございます。

僕、月に2回くらい夢が変わるんですよ。農家になりたいと思えば政治家になりたいと思ったり、しょっちゅう変わるんですけど(笑)一貫しているのは、済々黌に入学した者として、社会のために、日本や世界のために働けるような人材になりたいなと思っています。

私は小さい頃から映像とか好きだったので、将来は映画や広告業界を目指したいなと。

広告業界、広告業界ならちょっとわかる。楽しいですよ、広告。うん。

私は父が医師なので、そっちの道に進みたいと思っていたんですけど。姉が医学部に合格してそっちは任せて好きなことしようと思っています。熊本にはずっと残りたいと思っていて、熊本に貢献できるような、人のためになるような会社を作って、それが成功したら世界にいきたいなって思っています。大きいですけど(笑)

グローバル人材じゃん!

素晴らしい。黌長先生が「済々黌を出た人は、何かのリーダーを目指してほしい」と仰ってたから。医学の方はお姉ちゃんに任せてっていうのが良いね。役割分担が良いですよね。ありがとうございます。

私は国際協力とか国際貢献とかにすごい興味があります。勉強ができない子どもたちとか、貧しい人たちを救いたいなって。三綱領にあるように、文明を進む、私たちが文明を進めていく、世界を変えていく、そんな人間になれたらいいなって思っています。

中学校では生徒会活動をやっていたんですけど、そのときに全体のために仕事をするのがすごく良いなと思って、自分の意志で公務員を目指したいと思うようになりました。将来は県庁職員になって、今まで育ててもらった熊本に恩返しできるようになりたいです。

本当にすごいね、みんな。最後に「済々黌ってどんな学校かな」って思っている身近な人がいるとして。例えば中学の後輩とか、自分の弟妹とか。「済々黌を目指すかどうか迷ってる」って言われたら何と答えますか?

「済々黌に入れば、自分が動けば何でもできるよ」って言うと思います。去年の文化祭が感染症の影響で中止になってしまって。どうにかしようと思ったときに、池田くんに相談したんですよ。彼は映像の技術を持っているので、オンライン文化祭をしようっていうことになりました。その後、紆余曲折ありながらも実際に YouTube 上で動画を配信する形でオンライン文化祭を実現できて……。自分が何かをやりたいと思ったら、応援してくださる先生方や仲間がいます。まだ将来の夢が決まってない人、やりたいことが分からない人でも、済々黌に来れば周りの人に影響されて、必ず見つかると思うので。ぜひ来てほしいなって思います。

もちろんGOです。命令しますよ(笑) 済々黌に入学してから、楽しくて楽しくて。さっき佐藤さんが言ったように、挑戦したいことがあれば何でもできます。1200人いれば1200人の個性があって、その個性をお互いに認め合ってこその済々黌。生徒一人ひとりが輝いている学校なので、迷ったら来い!としか言いません。

先生どうですか? 教員として、もし中学生に進路指導することになったら「済々黌においで」って仰いますか?

本校の入学試験では、毎年250人から300名弱の不合格が出て、涙を飲んでいます。だから、この子たちも受験の段階で相当の覚悟があったと思いますね。そういった部分の覚悟も含めて、入れば当然厳しいところもあります。特に学業に関しては譲れない。一方、もちろん自分たちで考えて自由にのびのびできる部分も多々ありますから、そこは大いに楽しんで。教職員一同、お待ちしています。

みなさん、放送部も生徒会も、応援団も大変だと思うけど。コロナ禍でできないことがいっぱいあると思うけど、その中で何とか成し遂げたことって本当に思い出になるからね。きっと一生、覚えてるからね。辛いことばっかりじゃないと思うので、頑張ってほしいなと思います。

ありがとうございます!

今回の取材、これが最後で本当に良かったです。みんなに出会えて、どんな気持ちでこの記事を作るか、見てくれる人に何を伝えたら良いか、指針ができました。本当にありがとう!

以上をもって、済々黌と佐々友房、三綱領をめぐる一連の取材は幕を閉じた。140年前、ひとりの若者が命をかけて磨き抜いた言葉たちは、かつて若者だった者、今を生きる若者に確かに受け継がれ、彼らを輝かせ続けているのだ。

前編【馬上の美少年、佐々友房がたどり着いた地平。】を読む

田中 泰延Tanaka Hironobu

ひろのぶと株式会社 代表取締役社長
1969年大阪生まれ。早稲田大学卒業後、
株式会社 電通でコピーライター・CMプランナーとして24年間勤務ののち退職、
2017年から「青年失業家」を名乗り、ライターとして活動を始める。
2019年、初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。
Amazon和書総合ベストセラー1位を記録し、16万部突破のベストセラーとなる。
2021年、著作第二弾となる『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)を刊行。
2020年、「本を書く人が、生活できる社会へ。」を掲げる出版社「ひろのぶと株式会社」を創業。

井関 麻子Iseki Asako

イセキ文書製作所 代表 1983年熊本生まれ。
早稲田大学卒業後、経済誌の記者、ホテル広報を経て2009年に独立。執筆・編集を軸に、広告コピー、文化空間展示、ネーミング、広報サポートなど幅広く携わる。

田中 泰延Tanaka Hironobu

ひろのぶと株式会社 代表取締役社長
1969年大阪生まれ。早稲田大学卒業後、
株式会社 電通でコピーライター・CMプランナーとして24年間勤務ののち退職、
2017年から「青年失業家」を名乗り、ライターとして活動を始める。
2019年、初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。
Amazon和書総合ベストセラー1位を記録し、16万部突破のベストセラーとなる。
2021年、著作第二弾となる『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)を刊行。
2020年、「本を書く人が、生活できる社会へ。」を掲げる出版社「ひろのぶと株式会社」を創業。

井関 麻子Iseki Asako

イセキ文書製作所 代表 1983年熊本生まれ。
早稲田大学卒業後、経済誌の記者、ホテル広報を経て2009年に独立。執筆・編集を軸に、広告コピー、文化空間展示、ネーミング、広報サポートなど幅広く携わる。

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